会社員やパートなどでこれまで働いてきた妊婦さんも、産休でしばらくお仕事はお休みに。当然ですがお給料が入らなくなります。これまでコンスタントに入ってきた収入がなくなることへの不安は計り知れないですよね・・・!
ただ、産休中の生活をサポートし安心して子育てができるよう、出産や産休中には手当金が用意されています。
産休中にもらえるお金として出産育児一時金と出産手当金がありますが、それぞれ何が違うのか、どういう条件でいくらもらえるのか、いつ頃もらえるのか、などわかりづらいことばかり。
この記事では、私自身の思考の整理がてら出産にまつわる一時金・手当金の申請ステップや計算方法などの諸々をまとめてみました。これから産休に入る方、産休中に時間があって出産後の手続きをクリアにしておきたい方には役に立つでしょう。
目次
受取条件・金額の計算方法
1. 出産育児一時金
妊娠・出産は、病気やケガとは異なるため健康保険が適用されません。でも、実費で分娩・入院費用などを負担するとなれば、高額な費用がかかってしまいますよね。
そこで、出産時の分娩・入院費用などの負担を軽くするために、社会保険より「出産育児一時金」が支給されます。
受け取る条件
出産育児一時金を受け取る条件は以下の2つです。
- 健康保険または国民健康保険に加入していること
- 妊娠4ヶ月(85日)以上で出産すること
日本の保険制度は、基本的に全員が健康保険に加入するよう定められています。生まれた赤ちゃんも出生から1ヶ月以内に健康保険に加入することが義務付けられているんです。
そのため、出産の際には学生や無職などは関係なく、妊娠している人が加入している健康保険組合から出産育児一時金を受け取れるようになっています。
妊娠4ヶ月(85日)以上の人が対象
出産育児一時金は、妊娠期間が4ヶ月(85日)以上継続していれば支払いの対象になります。
つまり、妊娠4ヶ月(85日)以上経過しており、残念ながら流産や死産となった場合でも受け取れるお金です。帝王切開での出産の場合も同様に受け取れます。
会社を退職した場合
妊娠を機に退職した場合でも、出産育児一時金を受けとれる条件があります。それが下記の3つ。
- 旦那さんの扶養に入った場合
- 国民健康保険に加入した場合
- 退職した会社の健康保険を利用する場合
3つ目の「退職した会社の健康保険を利用する」場合には、いくつかの条件があります。
- 妊娠4ヶ月(85日)以上の出産
- 受給資格を喪失する退職日までに継続して1年以上の被保険者期間がある
- 退職日の翌日から6ヶ月以内の出産
退職後、夫の扶養に入った場合は夫の健康保険もしくは自分が加入していた健康保険、そのどちらかから出産育児一時金を受け取ることができます。国民健康保険に加入したのであれば、国民健康保険から支払われます。
ただし、2つの窓口から重複して受け取ることはできないので、どちらからもらうかを選択する必要があります。
もらえる金額
出産育児一時金でもらえる金額は赤ちゃん一人につき42万円です。(2015年1月より)双子の場合は、その2倍の84万円、三つ子であれば3倍の126万円になります。
ただし、産科医療補償制度(後ほど補足してます)に加入していない産院で出産、または妊娠22週未満での出産となった場合の支給額は40.4万円になります。
加入している健康保険組合によっては付加金を独自で給付していることもあるので、組合に確認しておくと良いでしょう。
例えば、私の会社では「関東ITソフトウェア 健康保険組合」に加入しているのですが、42万円に加えて出産育児付加金としてさらに90,000円の給付もあるため、合計510,000円が給付されることになります。(2017年10月現在)
知らなかった!では損なので、自分の給付金がいくらなのか加入している保険組合または会社に事前に確認しておきましょう。
【補足】産科医療補償制度とは
医療期間が加入する保険のことです。
赤ちゃんが生まれた時に、出産時の事故で身体障害となってしまった場合(身体障害者手帳1・2級相当)などに、赤ちゃんに対して補償金が支払われるものです。
この補償制度は保険と同様、分娩に対して掛け金を支払った上で補償されるもの。1分娩あたりに対して16,000円の掛け金となっています。その掛け金が出産費用に上乗せされた金額を、産院から出産した人に対して請求します。
産科医療補償制度に加入していない産院ではそもそも分娩に対する補償(保険)を掛けていないため、16,000円分が差し引かれた40,4万円分が支給額になるということです。
2. 出産手当金
出産手当金とは、産休中に給料の代わりとして受け取れるお金のことです。産休中にお給料がそのまま支払われる会社はまだまだ少ないですよね。
その産休中の生活を支えるために、勤務している会社が加入している健康保険組合から産休手当金が支給されます。
当然のようですが産休中にお給料が支払われる人については、この手当金はもらえません。しかし、お給料がこの手当金を下回る場合は、手当金 – お給料の差額分が支給されます。
受け取る条件
出産手当金を受け取れる人は、下記の条件を満たしている人です。
- 勤務先が加入している健康保険の保険料を自ら支払っている人
- 条件を満たした上で退職をした人
この2点を満たしていれば、正社員に限らず契約社員・パート・アルバイトなども対象になります。
前述しましたが出産が理由で仕事(会社)をお休みし、その期間は会社から給料を支払われていないということが前提条件となります。
なので、自営業やフリーランス、無職の方などが加入する国民健康保険の加入者や、家族の扶養に入っている人は対象になりません。
退職した場合
では、これまで会社員だったけど妊娠を機に退職した人は、この出産手当金はもらえるのか、というとこちらも一定の条件を満たしていればもらえます。
- 被保険者の期間が1年以上継続してある(勤続1年以上)
- 退職日から42日以内に出産予定日がある
- 退職日は勤務していない(有給休暇の消化)
この条件を満たしていれば、退職後でも出産手当金はもらえます。
健康保険の決まりで、退職日の翌日が健康保険の資格喪失日となります。そのため、資格喪失時には産休に入っている状態でないと出産手当金がもらえないのです。(2017年10月時点)
支給の対象となる期間
出産育児一時金は、出産に対する被保険者への負担を軽くするために支払われるものでしたが、出産手当金は産休期間中の生活を支えるための手当金です。
そのため、支給対象となる期間は、産前産後休暇として定められている期間になります。
- 産前:42日間 ※出産予定日含む
- 産後:56日間 ※出産の翌日から
ただ、産前の42日間はあくまでも出産予定日に赤ちゃんが産まれた場合です。出産予定日よりも7日間早く産まれた場合は、42日間 – 7日間 = 35日間が対象期間となり、逆に遅れた場合は42日間 + 7日間 = 49日間が対象期間となります。
産後については、赤ちゃんが産まれた次の日から56日間がカウントされます。産まれる日によって支給の対象期間は多少変動すると理解しておきましょう。
支給金額の計算方法
2016年4月以降は下記の計算方法で統一されました。
標準報酬月額とは、給与明細に載っている基本給・各種手当・残業代・交通費などを含んだ総支給額を区切りの良い金額の幅で分けた額のことです。いわゆる、手取りではなくもろもろ差し引かれる前の「額面」のことですね。
その額面の12ヶ月分を平均した額が標準報酬月額です。それを30日間で割って、さらに2/3した金額が1日あたりの出産手当金の額になります。1日あたりの出産手当金の額を産前産後の支給対象日数をかけると、おおよその合計支給額がわかります。
30万 ÷ 30日 x ⅔ = 約6,600円(1日あたりの出産手当金の額)
産前 42日 x 6,600 = 約277,200円
産後 56日 x 6,600 = 約369,600円
出産手当金合計 = 約646,800円 が支給されることになります
この金額をもらえるのともらえないのではかなり大きいですよね。ただ、産休中にもらえるのかというとそうでもないので、お給料がストップすることを想定して、あらかじめ2〜3ヶ月分の貯蓄をしておくと困らないですよ。
筆者は何かと支出が重なって数ヶ月かなり金銭的に苦しい期間があったので、本当にこれは意識しておいた方が良いです!次の章で解説します。
出産育児一時金・出産手当金の申請・受取
出産育児一時金
出産育児一時金の受け取り方は3通りあります。
直接支払制度
健康保険組合が、出産した産院に対して出産育児一時金を直接支払う制度のこと。そうすることで、被保険者(妊婦さんやその家族)が退院時に産院に支払う出産費用が出産育児一時金と相殺されるため、大きなお金をあらかじめ用意せずに済みます。
この制度を利用するために確認するべきこと・やるべきことは下記です。
- 出産する予定の産院が直接支払制度を導入しているか
- 導入している場合、直接支払制度の合意書に記入・提出
- 入院時には産院に健康保険証の提出
- 退院時、出産育児一時金よりも総額が上回った場合は差額を支払う
- 退院時、出産育児一時金よりも総額が下回った場合、健康保険組合に差額の申請をして現金を受け取る
受取代理制度
出産予定の産院が直接支払制度を導入していないケースもあるかと思います。その場合は、ママ本人が健康保険組合に申請して出産育児一時金を出産予定の産院に支払われるようにします。
直接支払制度とは申請方法が異なるだけで、医療機関に直接出産育児一時金が支払われるのは同じです。なので、ママが出産した医療機関の窓口で退院時に支払うお金は、出産育児一時金の額を上回った分のみ、下回った差額は後ほど申請した上で振り込まれます。
- 健康保険組合から受取代理制度の申請書をもらい、記入
- 出産する医療機関で、申請書に必要事項を記入してもらう
- 出産する2ヶ月程前に、健康保険組合に申請書を提出
- 入院時には産院に健康保険証の提出
- 退院時、出産育児一時金よりも総額が上回った場合は差額を支払う
- 退院時、出産育児一時金よりも総額が下回った場合、健康保険組合に差額の申請をして現金を受け取る
産後申請方式
産後申請方式とは、分娩・入院にかかった総額費用を出産した医療機関にすべて支払い、退院後に健康保険組合に申請して指定口座に出産育児一時金を振り込んでもらう制度です。
申請は下記のような流れになります。
- 健康保険組合から出産育児一時金申請書をもらい、記入
- 出産の入院時に申請書を出産予定の医療機関に持参、証明書欄に記入してもらう
- 退院後、申請書を健康保険組合に提出
- 申請から2週間~2ヶ月経ってから指定口座に出産育児一時金が振り込まれる
この3つの受取方法のうち、もっとも一般的となっているのは「直接支払制度」です。ママや家計の負担になりづらく、手間も省けるので多くの産院で直接支払制度を導入しているでしょう。
ただ、希望によって受取方法は変えられたり、対応・非対応はそれぞれの医療機関で異なるので、あらかじめ出産予定の医療機関にて確認しておくと良いでしょう。
【補足】直接支払制度・受取代理制度での「差額」の申請について
出産の総額費用が出産育児一時金よりも下回った場合、その差額分を受け取れると前述しました。
その申請についてですが、勤務先の加入している健康保険組合によって、請求方法や必要書類が異なります。詳細は、加入している健康保険組合に問い合わせて適切なステップにて申請しましょう。
一般的には、支給決定通知書が届いたら、健康保険出産育児一時金差額申請書に必要事項を記入し、健康保険組合に提出する流れとなっています。
その際に、出産した医療機関等から交付される直接支払制度にかかわる契約に関する文書や出産費用の領収・明細書の写しなどが必要な場合があるので、医療機関からもらう領収書や書類は一定期間、保管しておいたほうがベターです!
出産手当金
出産手当金は、産休取得中に被保険者(ママ本人)の口座に振り込まれる生活を支える手当金と説明しました。産休取得中の生活を支えるとはいうものの、実際にお金が振り込まれるまでにはタイムラグがあります。というのも、産後56日が経過した後で会社の担当者(または本人)が申請書を提出して受理された後に振り込むという手順を踏むためです。
そのため、出産手当金の振込みは最短でも2か月半、遅くて産後4ヶ月後になるという認識でいるとまちがいないです。それよりも早く振り込まれたらラッキーと思いましょう。
受取は一括 or 分割
出産手当金の受取方法は2通りです。一般的なのは、産前分・産後分を一括で受け取る方法。もう1つは、産前分・産後分を2回に分けて受け取る方法です。
ただし、基本的には一括で受け取る方法がメジャーです。加入している健康保険組合が、分割にも対応しているかどうかは勤務先または直接問い合わせてみると良いでしょう。
分割にする場合には、勤務先の記入欄は1回目・2回目でも必要になるので担当者の仕事を増やしてしまう、という点は考慮した方が良さそうです。
出産手当金の申請方法
一般的な流れは下記のようになります。
- 出産予定日がわかったら早めに勤務先に出産手当金の受給資格の有無を確認
- 産休に入る前に勤務先で申請書(健康保険出産手当金支給申請書)をもらう
- 出産で入院するときに、申請書を持参して医師に記入してもらう
- 出産後、勤務先に申請書を提出(勤務先の健康保険担当者が保険組合へ申請書を提出)
- 産休終了後から2週間~2ヶ月後に出産手当金が振り込まれる
もし、会社で出産手当金支給申請書を用意してもらえない場合や退職している場合は、自ら社会保険事務所へ取りに行かなければいけません。出産予定日がわかり次第、なるべく早めに会社の総務部や担当者に確認しておきましょう。
また、申請書には自分で記入する欄、医師や助産師が記入する欄、会社が記入する欄があるので漏れがないように注意しましょう。この書類の不備によって、手当金の支給に遅れを発生させてしまうこともあります。なるべく早くもらえるように、用意周到にしておきたいところです。
産休に入ってお給料がストップしてから手当金が入る数ヶ月ほどの間、毎月の自分の固定支出プラスアルファくらいの余裕を持った資金を手元に残しておかないとなかなか辛いです。
赤ちゃんが産まれると、予想していない出費もかさんだりします。自分自身も産後のケア用品などを買うお金なども考慮してストレスがたまらないように準備しておきましょう。
出産後にスムーズに申請できるように準備を
赤ちゃんが産まれる前と産まれた後の生活は、180度変わります。時間の使い方が変わります。最初の数ヶ月はあまり余裕を持てないと思います。
そのため、こういった手続き関連のことは、出産前にしっかりと理解しておき、必要な手続きや書類の記入を済ませておきましょう。